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「飛び級・飛び入学」で問われる日本の教育の柔軟性

このところ「飛び入学」に関するニュースをちらほら見かけます。例えば、5月21日付け朝日新聞「ひと」欄。名古屋市の高校2年生、林璃菜子さんが京都大学医学部の「特色入試」制度を利用して合格を果たした記事が載りました。林さんは国際化学オリンピックの世界大会で銀メダルを獲得した才媛。大学で好きな化学を学べる時間が増えるならと、飛び入学に挑戦したそうです。

大学への飛び入学は学校教育法で認められていて、「高等学校に2年以上在学した者(またはこれに準ずる者)で、大学が定める分野で特に優れた資質を有する者」を対象としています。ただ、2020年度入試で飛び入学を実施した大学は、京都大学、千葉大学など8大学の11学部のみ。飛び入学は、横並びではなく個性や能力に応じた教育を推進することを目的としていながら、現実にはあまり活用されているとは言えないようです。

そこに一石を投じたのが、政府の教育再生実行会議。日本経済新聞は4月25日、大学の単位を取得するなど一定の条件を満たせば高卒資格が得られるよう、同会議が国に提言する方針を固めたと報じました(6月3日に提言実施)。現在の制度では、飛び入学をしても大学を中退すると最終学歴は中卒のまま。この提言の採用でその足かせが外れ、飛び入学が広がる可能性もあるといいます。

とはいえ、日本では飛び入学で短縮されるのは1年間だけ。大学への入学年齢を制限しない米国やフランス、中国などに比べると見劣りは否めず、高校生の海外大進学が加速するなか、優秀な頭脳の流出増大も危惧されます。

まさにそんな懸念を感じさせたのが、同じく朝日の「ひと」欄(6月28日)でした。通信制高校からひとっ飛びに米国の名門、CalTech(カリフォルニア工科大学)の大学院に入学した金子生弥さんの話。中学2年で数学に目覚め、中3には専門誌に何本もの論文を投稿、国内外の数学者との共同研究も始めたという超逸材。でも、周囲から変わり者扱いされた挙げ句、海外進学へ。

優秀な学生の確保もさることながら、やりたいことをやり抜ける場所がもっと国内に広がることを願います。(M)